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イノベーション
2016.08.29

経産省「IoT推進ラボ」は規制緩和の突破口となるか

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経済産業省「IoT推進ラボ」は2015年10月23日にIoT/ビッグデータ/人工知能時代に対応し、企業・業種の枠を超えて産学官で利活用を促進するため、民主導の組織として設立されたIoT推進コンソーシアムの取り組みの一つ。

先進的なモデル事業の創出、規制改革などの環境整備を行う。設立からおよそ10カ月たった今、どのような成果がでているのか。経済産業省情報経済課の萩谷惟史課長補佐(以下萩谷さん)に聞いた。

—IoT推進ラボ設立の背景は?

萩谷さん:IoT推進ラボは、IoT推進コンソーシアムの取り組みの1つです。座長は経営共創基盤の冨山和彦代表で、委員会には多くの企業の方々が連なります。

その中には、ボッシュやグーグルなど、外資系企業も多くあり、これまでの委員会とは一風変わった顔ぶれなのではないかと思います。これは座長の冨山さんの言ですが、これまでのR&Dというのはリニアなものが多かった。一つひとつ段階を踏んでいくようなR&Dですね。

世の中に出るのにも時間がかかる。しかし、これからはスパイラル型のR&Dを推進していくべき。人工知能を活用した高度な分析もデータが無ければ何の役にも立ちません。ある程度のものができているのであれば、それを社会にだしてみて、データを集め、精度を高めていくようなR&Dを目指したい。そんな思いもIoT推進ラボには込められています。

—具体的には?

萩谷さん:資金支援と規制支援、企業連携支援を3本柱としています。資金支援と規制支援については、中長期の複数企業によるテーマ別プロジェクトの支援するものと、短期の個別企業によるとがったプロジェクトの支援を行っています。

中長期の複数企業によるテーマ別プロジェクトは、「インフラ、サプライチェーン」「街、住まい」「医療、健康、介護」「サービス(観光、金融、教育)」「その他(行政、農業など)」の5テーマにわけて事業間連携を行いながら共通する基本構造を検討するなどしています。

この5テーマについては、ラディカルな問題が多く存在しているので、1社を支援するという考え方ではなく、全体で考えていくべきことだととらえています。

—例えばどんなことでしょうか?

萩谷さん:たとえばインフラの分野ですと「水」などですが、漏水が多い問題をIoTを用いて解決できないかという取り組みがあります。こうした社会インフラの維持管理・運用効率化をするにあたっては、各自治体が管理しているものなので、単純にシステムを導入すればいい、というだけでは終わりません。こういった課題の解決に向けて、支援していきます。

まず、短期の個別企業によるとがったプロジェクト支援については、政府系機関や民間金融機関、ベンチャーキャピタル(VC)など官民一体で資金支援とメンターによる伴走支援、規制改革・標準化に関する支援を行っています。

—具体的にはどんな企業の支援がありますか?

萩谷さん:選考会議を行い、ファイナリストを選出し、グランプリを決めていくという取り組みをこれまでに2回行ってきました。1回目のグランプリはLiquidの「指紋による訪日観光客の個人認証(決済・本人確認)」でした。資金援助を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受け取り(上限2000万円)、規制についてもサポートしています。

—規制については具体的にどんなことが?

萩谷さん:外国人観光客が日本へ訪れた際、宿泊先のホテルなどでパスポートを提示する必要があります。これは厚生労働省所轄の旅館業法によるものですが、Liquidからこれを指紋だけで済ませるようにしたい、という相談を受けました。

私たちは、彼らの思いに応えるため、どのように進めれば解決できるのかと検討し、グレーゾーン解消制度で厚労省から回答を得ました。現在、池袋のプリンスホテルで実際に実証テストを行っています。

—グレーゾーン解消制度とは何でしょうか?

萩谷さん:グレーゾーン解消制度は、事業者が現行規制の適用範囲が不明確な場合でも、新事業活動を行えるように規制の適用の有無を確認できる制度です。

この制度で、Liquidの指紋生体認証システムを用い、利用者の指紋とパスポートのICチップの情報を事前に登録し、チェックイン時に指紋をかざし、登録された情報を確認することは、旅館業法に基づく通知で求める「旅券の呈示」を受けたものとしてみなすことが確認できました。

現在、池袋の「サンシャインシティプリンスホテル」に宿泊する訪日外国人を対象に実証テストを行っています。フロントに設置された専用端末で指紋とパスポート情報を登録し、利用者自身が専用サイトでクレジットカード情報を登録すると、今後は「サンシャインシティプリンスホテル」の専用端末に指をかざすだけで本人確認ができます。

—一方、中長期の支援ではどのようなことを?

IoTプロジェクトを創出していくためには、一点突破的に個別の企業を支援する一方、様々な事業者がビジネスに取り組める環境を整備していくことが重要です。

そのため、中長期の複数企業によるテーマ別プロジェクトとして、大きく「インフラ、サプライチェーン」「街、住まい」「医療、健康、介護」「サービス(観光、金融、教育)」「その他(行政、農業など)」の5テーマにわけて、事業者間で協調すべき内容を整理し、複数企業で情報を共有するためのプラットフォームの形成や、そのためのデータフォーマットの統一化や規制改革、業界横断的なルール形成等に向けた実証に取り組んでいます。

—例えばどんなことでしょうか?

萩谷さん:例えば、インフラの分野の一つである「上水道」について、中小の水道事業体は、人口減少に伴う需要減少や老朽化した設備管理等の課題を抱えています。

こうした課題に対して、例えば、気象データやイベント情報等を活用した需要予測や遠隔制御によるオペレーションの効率化、需要情報や送配水設備情報の正確な把握による水生産能力の融通など、IoTを用いることで様々な課題を解決できる可能性があります。

単純に各水道事業体が最新のシステムを導入すればよい話ではなく、将来的に様々な水道事業体間で連携が容易に行えるよう、情報のやりとりやシステムの在り方等について最低限揃えておくべきデータフォーマット等を整理しておくことが重要です。そのため、厚生労働省や水道事業体、システムベンダーなど様々な関係者が参画した実証プロジェクトを進めています。

—3本柱の最後、企業連携支援については?

萩谷さん:これは多くの団体が行っているものと同じようにビジネスマッチングやプレゼンマッチング、自治体ブースマッチングなどをしています。

他との違いは、やはり企業数の多さや自治体の多さでしょうか。マッチングをしていく上で、多くの人が集まることが大切だと考えています。

1回目のマッチングは「観光」と「製造(スマート工場)」をテーマに2016年1月28日に行い、814名の方が参加しました。2回目は「ヘルスケア(医療、健康、スポーツ)」と「物流、流通、インフラ」で7月末に行いました。3回目は「スマートホーム」と「モビリティ」で10月にCEATECの場で開催します。

—IoT推進ラボの強みはなんでしょうか?

萩谷さん:IoTによって、テクノロジーがあらゆるところにしみ出していきます。私たちはITを使ったイノベーティブなものであれば、IoTと言えるのではないか(いまイノベーティブなものはIoT的なものにならざる得ない)と考えています。

この取り組みをしている企業(大小関わらず)を規制というハードルを乗り越えるお手伝いができるのは強みではないでしょうか。

法令にも法律、政令、省令、通達などから自治体による条例や規則など様々。テクノロジーがあらゆる分野にしみだしてくるIoTの時代では、これまでITの世界でスピード重視で動いてきた企業たちも規制とは無縁でいられなくなる。萩谷さんは「彼らがやりたいことを、どうやったら今の日本でできるのか、他省庁とも話し合いをすすめていけたら」と話した。

IoT推進ラボ
https://iotlab.jp/jp/index.html

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