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イノベーション
2017.11.30

産学官民連携で実現するデータ主導社会とは
データ流通推進協議会設立記念シンポジウムレポート

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11月27日(月)、都内で「一般社団法人 データ流通推進協議会(以下、データ流通推進協議会)」の設立総会、並びに記念シンポジウムが開催された。

データ流通推進協議会は、データ提供者が安心してスムーズにデータを提供でき、データ利用者も己が欲するデータを容易に判断して収集、活用できるようにするための技術的・制度的環境を整備すること等を目的に設立された団体だ。
同協議会の正会員は26社、賛助会員は6社、特別会員が2個人2団体(11月27日現在)。オムロンやシャープ、日立製作所や富士通など著名な企業が名を連ねる。

今回は設立にあたり、厳粛な雰囲気の中行なわれた総会決議や動議採決、理事紹介の後「産学官民連携で実現するデータ主導社会に向けて」と題したシンポジウムが行なわれた。内閣官房、総務省、経済産業省からそれぞれ担当者が登壇し、各省庁のデータ利活用についての取り組みやデータ流通推進協議会への期待を語った。

本記事では、シンポジウムの模様をダイジェストでお送りする。

AI、IoT時代におけるデータ利活用の意義と課題

はじめに行なわれたのは、内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室長代理 副政府CIO 神成淳司氏による「AI、IoT時代におけるデータ利活用の意義と課題」(官民データ活用推進基本法の制定とデータ流通・活用環境の整備について)。

神成氏によれば、現状日本では諸外国に比べ、データを活用したビジネスやサービスの高度化が十分に成されていないという。
IoT機器の普及やAIの進化によって効率的かつ効果的に収集、共有、分析、活用できるようになったビッグデータを安全に流通、及び活用するための環境を整備する目的で行われている、官民データ活用推進基本法等の制定などの法整備について語られた。

データは「個人情報を含むデータ(以下、パーソナルデータ)」、「匿名加工されたデータ」、「個人に関わらないデータ」(IoT機器からのセンシングデータ等)の3つに分類されるとした上で、これら3つの流通、活用を活性化させることが急務とのこと。データの業種・業界を超えた流通により実現できる便益として、金融・フィンテック分野が例の一つとして挙げられた。データの連携が進めば、資産の一元管理、最適な資産運用ができるようになる。

続いて官民データ活用推進基本法制定によって情報銀行やデータ取引市場の実装に向けた検討がなされている点、国や各地方公共団体がオープンデータを公開、共有する取り組みを行なうことが義務化された点について語られた。

掲げられた「オープンデータの推進に関する関する今後のスケジュール(案)」によれば、今年12月から来年3月にかけてのスケジュールは、地方公共団体向けガイドライン及び手引書を改訂して公表し、これからオープンデータに取り組み始める地方公共団体が参考にできるよう、公開することが推奨されるデータを挙げた「推奨データセット」を公表する予定とのこと。実態把握や定義の明確化等を経て、いよいよ4月からは具体的な取り組みが始まるといったところだろうか。

最後にデータ利活用の先駆的取り組みの例として、農業データ連携基盤協議会「WAGRI」の取り組みが紹介された。従来個々で完結していた様々なICTサービスで取得、蓄積されたデータを相互で利用できるようにすることで、各農家がより戦略的かつ合理的な経営判断を行なえるよう支援できる。その上、様々なセンサー等から得られるデータやシステムを連携させた総合的な解析を行なうことで、作物の品質自体も向上するという。

2017年8月に設立されたWAGRIには80組織が参加(11月現在)している。農業に焦点を絞ることで、迅速なデータ取引市場の開始を目指す。
まずは農業の中でデータ連係による成果が出始めれば、さらに農業と他分野との連携へとつながっていくのだろう。地方創生の面からも注目したい取り組みだ。

「データ主導社会」とICT

続いて登壇した総務省 大臣官房総括審議官(情報通信担当)吉田眞人氏による「『「データ主導社会』」とICT」では、まず生産年齢人口の減少について触れられた。

自然減の他、都心へと人が流れていく「社会減」も地方圏での生産年齢人口減少の原因となっているという。これらによる経済縮小を解決するには、ICTの利活用が鍵となるとのこと。

テレワークの推進による女性の活躍など具体例を挙げながら、IoTやビッグデータ、AI等のICT利活用によって日本が抱える様々な課題を解決し、厳しい現状の中でも持続的な成長を実現できることを強調した。

講演タイトルにもある「データ主導社会」について、現実世界のIoT(様々なモノ・機械・ヒト)とサイバー空間にあるAIやビッグデータが相互に連携しあうことによって、現実世界の社会的課題を解決に導き、新たな価値の創造想像にもつながるイメージが示された。加えて、地方自治体がIoTの力を使って地域課題を解決するモデルケースを作りたいという旨も語られた。総務省としては「実装、実証の好循環」を生んでいきたいとのこと。その実現に向け、政府全体で取り組みを進めているということだ。

また先の講演と同じく日本では現状、データを十分に利活用できていない点や、データ利活用に向けた国内外の動きについて触れられた。

野田総務大臣が過去の発言等で指摘している「2020年以降」に触れ、今後はICT政策も2030~2040年頃を焦点に行なっていく必要があると吉田氏は話す。厳しい人口減少時代の中でも「明るい未来」を描いていくために、2030~2040年から逆算して「今」何をすれば良いのかを考えて実行している、と力強く語られた。

コネクテッド・インダストリーズ

経済産業省 商務情報政策局長 寺澤達也氏

最後に登壇した経済産業省 商務情報政策局長 寺澤達也氏は「コネクテッド・インダストリーズ」と題した講演を行なった。

はじめにタイトルの「コネクテッド・インダストリーズ」について、安倍総理の発言やハノーバー宣言が紹介された。

安倍総理はコネクテッド・インダストリーズのコンセプトについて、今年3月に開催されたドイツ情報通信見本市(CeBIT)で次の要素を柱とする旨をスピーチしたという。

①人と機械・システムが協調する新しいデジタル社会の実現
②協力や協働を通じた課題解決
③デジタル技術の進展に即した人材育成の積極推進

日独共同声明「ハノーバー宣言」の中では「人、機械、技術が国境を越えてつながる『「Connected Industries』」を進めていく旨」が宣言されているという。

コネクテッド・インダストリーズの考え方とは、電子化は進んでいるもののそれぞれバラバラに管理され、連携されていない事業所や工場、技術や技能等の各データを連係、有効活用することで技術革新、生産性向上等を通じた課題解決を目指すものだ。大まかな概念はこれまでの2講演で語られていたものと同様だ。

講演ではコネクテッド・インダストリーズが重点的に取り組む5つの分野が紹介された。

・自動走行・モビリティサービス
・ものづくり・ロボティクス
・バイオ・素材
・プラント・インフラ保安
・スマートライフ

中でも「ものづくり・ロボティクス」、「バイオ・素材」は従来より日本の強みでもあったが、今後はデータを活かしてより効率的に支援する仕組みが整備されていくことになる。

また、日本の強みは「リアルデータ」であり、バーチャルデータの利活用については諸外国に後れをとっているという。今後は強みであるリアルデータを核に支援を強化していくとのことだ。

そしてこちらの講演でも具体的な法整備について触れられた。
まず、平成30年度3月までにデータ契約ガイドラインの改定を行なうという。
例えば、AIの活用により事故が起こった際の責任の所在。AIの活用により新しい物ができた際の権利獲得者。そういったAIの責任関係、権利関係について明文化されていくそうだ。

さらにコネクテッド・インダストリーズの実現には、「安心」してデータをやり取りでき、データの創出や分析に対する投資に見合った適正な対価を得るための環境整備が重要だと寺澤氏は語り、具体的には不正競争防止法の改定による制度の創設を目指すという。本来データに関する法律ではないが、現状の民法ではなかなかデータの不正取得を防ぐことはできないため、そちらを拡充して対応できるようにしたいという。データの共有や利活用の促進を考えた際に、必ず絡んでくるデータの保護問題。現在、次期通常国会への法案提出を目指している最中とのことだ。

他にもデータの共有や税制措置に関する制度も整備中だという。情報銀行(事業者)に関する民間の自主認定制度の策定支援も検討中とのことで、個人や企業が「安心」してデータを活用できる仕組みづくりが水面下で着々と進んでいる印象を受けた。

加えて昨今EUやアメリカで注目されてている「データポータビリティ」にも触れられた。諸外国の動きを参考にしつつ、日本におけるデータポータビリティ制度の在り方やそれによって解決すべき課題を明らかにしていくとのこと。

最後にデータ取引市場の拡大に向けて行なわれているデータカタログの整備等の取り組みが紹介され、併せてデータ流通推進協議会への期待が語られてシンポジウムが終了した。

シンポジウムの後は、自民党広報本部長 IT戦略特命委員長の平井 卓也氏からの祝電や、各委員会(運用基準検討委員会、技術基準検討委員会、利活用促進委員会)の各目的や期待する成果、ロードマップ案、予算案などが紹介された後、閉会となった。

デジタル化やIoT化が進み、膨大なデータが簡単に集まるようになった。しかしそれぞれバラバラのままでは意味がない。集めたデータを真に活用し、社会や個人に還元するには官民の強力が必要不可欠だ。法整備が進んで曖昧だった部分が明文化され、障害となっていた漠然とした不安感が解消されれば、個人の意識の面でも利活用の促進が進んでいくだろう。その流れの中核を担うことを国から期待されているデータ流通推進委員会の動きに、今後も注目していきたい。

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