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2019.05.27

スマートホームの普及を阻む壁を突破するには:佐野正弘のITトレンドウォッチ

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ここ数年来、「IoT」(Internet of Things、モノのインターネット)という言葉が大きな盛り上がりを見せていますが、今回は個人向けIoTの代表格、スマートホームについて考えていきたいと思います。 スマートホームとは、要するにIoTなどの技術を使って快適な暮らしを実現するという概念のこと。アマゾンの「Amazon Echo」などのテレビCMに代表されるように、スマートスピーカーを通じて家電をコントロールする、というのが最もイメージしやすい所かもしれません。 国内でもスマートホームに取り組む企業は確実に増えている印象です。例えばKDDIは、月額制のスマートホームサービス「au HOME」を2017年より提供しており、「Google Home」などスマートスピーカーへの対応を実現するとともに、2019年3月にはフランスベッドと共同で、睡眠モニタリング機能付きのマットレスを開発するなど積極的な取り組みを見せています。 ▲KDDIは2017年より「au HOME」を提供。2019年3月にはフランスベッドと共同で、睡眠モニタリング機能付きのマットレスを開発するなど、スマートホームに力を入れている。 またソニーネットワークコミュニケーションズも、スマートホームプラットフォームの「MANOMA」を2018年より開始。Amazon Alexaを搭載したホームゲートウェイをハブとして、スマートロックの「Qrio Lock」などと組み合わせたスマートホーム環境を提供しています。  そして今年に入ってからは、2019年5月20日にシャープが、スマートホームサービスの「COCORO HOME」を発表しています。こちらはスマートフォンをハブとする形で、家電機器を連携させたサービスを提供するというもの。単に家電をコントロールするだけでなく、利用状況に応じて家電の賢い伝え方を教えてくれたり、複数の家電を一括でできるよう操作を提案したり、さらには外部サービスと連携し、スーパーのチラシなどの情報配信もできたりするとのことです。 ▲シャープが発表した「COCORO HOME」。普段の操作状況を記憶し、家電の使い方提案や、一括操作の提案などもしてくれる ですが一方で、スマートホームを実際に使っている人がどれくらいいるかというと、あまり聞くことがないというのが正直な所です。かねてより高い注目をされているにもかかわらず、普及が進まないのにはどのような背景があるのでしょうか。 1つは、日本ではスマートスピーカーが普及しづらい環境にあることです。スマートホームが盛り上がり始めたのにはスマートスピーカーの登場が大きく影響しており、多くのスマートホームサービスは、スマートスピーカーを、多くの家電やIoTデバイスを管理・制御するハブとして活用することが前提となっています。 その理由は、スマートスピーカー、ひいてはその中で動作している「Amazon Alexa」や「Googleアシスタント」などの音声アシスタントが、スマートホームのプラットフォームとして活用されるようになったからでしょう。スマートスピーカーは自宅に置いて利用するデバイスであるのに加え、話しかけるだけで操作できる手軽さと、スキルで好みの機能を追加できる拡張性を備えていたことから、これをスマートホームのハブとして活用する動きが急速に広まったといえます。 ▲スマートホームが盛り上がったのには、「Google Home」や「Amazon Echo」に代表されるスマートスピーカーの登場が大きく影響している ですがそれはあくまで、米国を主体とした海外での話。日本の現状を見るに、スマートスピーカーの登場時は大きな盛り上がりを見せましたが、その人気が継続し、家庭に広く普及したかというと、そうとは言えない状況にあります。 その理由はなぜかといえば、そもそもスマートスピーカーは音楽を聴くためのデバイスだから、という点に尽きるのではないでしょうか。都市部の人口密集度がく、公共交通機関での通勤が多い日本では、近年のイヤホン市場の大きな盛り上がりが証明しているように、どちらかといえば音楽は個人で楽しむものとなっています。 一方家庭に目を向けた場合、集合住宅であれば騒音問題があるでしょうし、そもそも自宅にたくさん人を呼んで、パーティーを頻繁に開くといった習慣もありません。それゆえリビングでガンガン音楽をかける機会があまりないので、スマートスピーカーを置く必然性が薄いのです。いくらスマートホームのハブとして便利に使えるからと言って、従来の習慣を覆してまでスマートスピーカーを置く動機付けがあまりに弱い訳です。 もちろん最近では、スマートスピーカーにディスプレイも搭載した「スマートディスプレイ」も登場しており、スピーカーよりはリビングなどに置く理由付けができやすくなったといえます。ですが今度はディスプレイが付いたことで、既に多くの家庭に存在しているタブレットと何が違うのか?と考えてしまう人も、増えているのではないでしょうか。 ▲LINEの「Clova Desk」などのスマートディスプレイも増えているが、画面が付いたことでタブレットとの違いを見出しにくくなったのもまた事実だ スマートホームの普及を阻む要素はもう1つあります。それは現在のスマートホームが実現している機能が、多くの消費者にとってお金を払って導入するだけの価値につながっていないことです。 確かに、外出先から遠隔で電気の状態を確認できたり、スマートフォンで鍵を開けられたり、カメラで自宅の様子をチェックしたり、といった機能が便利なものは便利かもしれません。ですがそうした仕組みがない状況下で何十年と過ごしてきた人達にとって、ある意味"それだけ"のために何万円もの機器を購入し、手間をかけてセットアップし、サービスによってはさらに月額料金が取られる......というのでは、利用に二の足を踏んでしまうというのが正直な所ではないでしょうか。 もちろん、そうしたスマートホーム対応機器を低価格で提供するという動きも出てきています。例えば2018年7月には、ソフトバンク系のプラススタイルが、GoogleアシスタントやAmazon Alexaに対応した家電機器提供するという動きを見せています。ですがこの取り組みは販路がオンラインショップのみに限定されるなど、広く購入できるようになるには至っていません。 ▲プラススタイルは2018年7月に、安価なスマートスピーカー対応家電機器の提供を打ち出したが、オンラインでの販売にとどまるなど大きな取り組みには至っていない そうした現状を見るに、国内で多くの人がスマートホームに関心を持ち、普及していくにはまだ当分時間がかかるというのが正直な所です。では、そのブレイクスルーになるのは何かといえば、1つ目は対応機器の低価格化が進むこと、2つ目はスマートスピーカーに依存しないスマートホーム環境が整うことですが、最も重要な3つ目の要素となるのは、スマートホーム環境がバンドルされた住宅が増えることではないかと筆者は考えます。 いまの消費者はスマートホームが便利だという体験が圧倒的に不足しているため、自ら積極的に機器やサービスを購入しようとは思わない。なのであれば、最初からスマートホーム環境が整った家に住んでもらい、追加コスト不要で日常的にスマートホームを体験してもらうことで消費者の経験を高めていくことこそが、市場を広げる上で最も必要とされているのではないでしょうか。 こうした取り組みは、既にいくつかの賃貸住宅事業者が始めているようですが、まだ多いとはいえないのが現状です。デバイスやサービスを提供する事業者は、本格的なスマートホームの普及を目指すなら、もっと住設関連の事業者と積極的に手を組み、スマートホームの標準バンドル化を進める必要があるのではないかと考えます。 関連記事: au、睡眠を測るベッド用デバイスなどホームIoT新商品を投入:週刊モバイル通信 石野純也 シャープ、家電連携「COCORO HOME」発表。利用状況を学習し「テレビ、エアコン、シャッターの一括操作」も提案

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