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2019.04.08

宮古島の電動バイクシェアを支えるソフトバンクの「見えないIoT」

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3月上旬に宮古島でスタートした電動バイクのレンタルサービス「宮古カレン」。その仕掛け人の1人、ソフトバンクの山口典夫氏を取材しました。 沖縄本島からさらに西に位置する宮古島は、珊瑚礁に囲まれたリゾートアイランド。筆者が訪れた3月末にはすでに27度という暖かさ。電動バイクに乗って巡るには格好の気候です。宮古エリアには「日本一の長さの橋」があります。宮古島と下地島という2つの島をつなぐ橋は、無料で渡れる橋として最も長いもの。見渡す限りのエメラルドブルーに輝く海が広がり、肌を撫でる向かい風も心地よく感じます。 ▲宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋。全長3540mにもおよぶこの橋からは、美しい宮古の海を一望できます ▲マングローブの原生林もこの島ならではの風景 「宮古カレン」ではHONDAの電動バイク「PCX ELECTRIC」を1日1万2960円でレンタルできます。貸出場所はリゾートホテルなどに設置され、島内を自由に周遊できます。島内に点在する約20箇所のカフェがチャージスポットとなっており、満充電のバッテリーを交換して、そのまま周遊を続けることができます。PCX ELECTRICを運転するには原付2種免許が必要ですが、タンデム(二人乗り)も可能です。 ■遠くには行けない電動バイクをどう活用する? 「宮古カレン」はベンチャー企業のカレンスタイルが展開するサービスでありながら、裏側でHONDAとソフトバンクという2つの大企業がバックアップしています。そのアイデアを発案したのが、ソフトバンクの山口氏でした。 ▲ソフトバンクのITサービス開発本部 CPS事業推進室 室長の山口典夫氏 「ソフトバンクのゲリラ部隊」を自称する山口氏。情報工学の博士号を持ちながら、これまでソフトバンクで農業IoTや小型モビリティなどのサービスを発案・事業化してきたという異彩な人物です。 小型モビリティでは、2〜3人の小さなチームを率いて、瀬戸内海の豊島や奈良県の明日香村などの観光サービスに携わってきました。実は、最初からモビリティ(移動手段)を提供するサービスの開発を目指していたわけではないとのこと。当初開発していたのは「電力をシェアする」サービス。「ユビデン」という、コンセントを貸す人と使いたい人を繋ぐマッチングサービスのようなものを検討しており、そのための実証実験として、電気自動車などで利用した電力量を車両単位で記録できるか検証しているといいます。 そうした経緯ががありつつも、事業として成功を収めていたソフトバンクの小型モビリティサービス。今回の「宮古カレン」が誕生したきっかけは、HONDAが電動バイク「PCX ELECTRIC」を発表したことでした。PCX ELECTRICは市販されておらず、事業者などにリースで提供されている車両です。 「PCX ELECTRICのスペックをみて、どう料理しようかと考えた。電動バイクはクリーンで都会的な乗り物。音も出さないし、匂いも出さない。タンデムしながら普通の声で会話できる。一方で、原付でも数百キロは走れる中で、電動バイクのPCX ELECTRICは航続距離が50kmほど」と山口氏。 電動バイクでツーリングを楽しめる場所として白羽の矢が立ったのが宮古島でした。島の周遊であれば長距離を走らず、元の場所に戻ってくることができます。 電動バイクのPCX ELECTRICなら、鳥のさえずりも聴くことができ、島の空気を汚すこともありません。さらに、二人乗りができるバイクなら、カップルで同乗して一緒に島をまわることができます。まさにPCX ELECTRICの特性を生かすのに格好の条件が整っていました。 山口氏がHONDAに持ちかけると、同社の担当者も関心を持ち、両社の共同事業として計画がスタートしました。 航続距離の短さを逆手にとって、充電スポットを島に点在するカフェに設置。カップルが一緒に島をツーリングしながら、二人の時間を楽しめるようなサービスに仕上げました。運営は豊島でのパーソナルモビリティで実績を持つカレンスタイル社が担当。「バイクを運転するのは男性でも、選ぶのは女性」という同社の松良文子社長のアイデアで、バイクには珊瑚礁をモチーフとした鮮やかなデザインが施されました。 ▲バッテリーは女性が持てるサイズのものを2個搭載。"バッテリー交換スポット"になっているカフェなどで満充電にしたものと交換できるようになっています ■「見えないIoT」でサポート 宮古カレンの車両には、PCX ELECTRICをベースにGPSとLTE通信モジュールが搭載されています。しかし、これをレンタルして利用する人が気にする必要はありません。 通信モジュールはバイクの車載ネットワーク(CAN)に接続されており、バイクの現在の状態をHONDAのクラウドサーバーにアップロードします。その情報を解析することで、非常時の対応に役立てているとしています。 ▲宮古カレンのバイク搭載されるモジュール たとえば、バイクが転倒した場合に検知、ユーザーによる連絡を待たずして、管理者にアラートを送信できます。また、バッテリー残量が少なく、最寄りのポートまでたどり着くのも難しそうだという予測もクラウド側で行われます。管理者が交換用のバッテリーを持って現場に向かうといった判断に役立てることができるわけです。事故対応やバッテリー残量が少なくなったバイクの支援には、宮古地域のバイク店なども含めて協力体制を整えているといいます。 ▲「宮古カレン」の管理者向け画面 バイクの情報が見られるなら、ユーザー向けにアプリを作って、走った距離などをバイクで表示するといった使い方もできそうです。しかし、宮古カレンではそうした機能は盛り込んでいません。山口氏が「アンビエント(見えないこと)にこだわった」と話すように、ユーザーからは一般的なレンタルバイクの感覚で使えます。島の自然を感じながら走り、会話する中で、余計な情報を提供する必要はない。ただし困ったときには助けに行けるように見守っている、という発想から生まれた「見えないIoT」となっているわけです。 最近、「MaaS」(マース、交通のサービス化) という言葉がニュースで紹介され、IT技術によって交通課題を解決する取り組みが注目を集めています。ソフトバンクでもトヨタ自動車と合弁でMONET Technologysを設立し、交通課題に解消する取り組みに挑んでいます。MaaSのポイントは、車両から得られる大量の情報を分析して、より効率的に処理する、データ分析的なアプローチにあります。 一方で、必要とされる移動手段は、地域によって異なるため、ただ移動導入すれば便利になるというものでもありません。地域の特性にあった移動手段を分析して、コンセプトにあわせた技術を活用する。移動はもっと楽しく便利にするためには、その発想力も求められるのかもしれません。

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