IoT(Internet of Things)の最新ニュースや企業&ベンチャー事例(ケーススタディ)ほぼ毎日掲載

2019.02.23

5Gがメディアのネットシフトを加速する:本田雅一のウィークリー5Gサマリー

Powered by

僕ぐらいベテランのオッサンになると「第五世代」と言えば"コンピュータ(古っ!)"だったりしますが、ここ最近の「第五世代」と言えばやっぱり「第5世代移動通信システム」のことですよね。いわゆる、"5G(5th Generation)"です。 来週から始まるモバイルワールドコングレス(MWC)2019でも、5Gの応用と普及プラン、あるいは対応製品や今後の技術的アップデートのロードマップが話題の中心となっていくでしょう。 ということで、編集長のACCNから「5Gテーマで連載よろしく!カスっていれば、必ずしも"ど真ん中"ばかりじゃなくていいから!あ、技術解説的なところは"薄めでね!"」という意味不明な指令を受けて、ツラツラと書き始めています。 でも、これがなかなかテーマを絞りにくい。 教師生活25年!......じゃない、テクノロジジャーナリスト生活を25年以上続けてきて、今まで色んなテーマを扱ってきましたが、「5G」ほど記事として一般向けに書きにくいテーマは過去にありません。 たとえば移動通信システムでデータ通信が可能になったのは2Gの頃ですが、それから4G(LTE)までの道のりは、主に「電波の利用効率が良くなりました!」「結果、通信速度が速くなりました!」「消費電力少なくなりました!」「脳みそ沸騰しません!(冗談です)」などなど、端末の性能や機能性にダイレクトに響くものでした。 しかし現在のLTE(低消費電力のLPWA含む)、すでに多様な使い方に対応できており、サービスエリアも広く、おそらく我々が想像できる範囲の"スマートフォン端末"というレベルで言えば、かなり多くのニーズをすでに満たしているのではないでしょうか? スマホの高性能化のための5G! と言われても、あまりピンと来ませんよね。 もちろん、5Gで高速になりますが、実は5Gのポイントは高速になること"だけ"ではありません。 では、どんな効果が? というと「低レイテンシ」とか「大容量(ひとつの基地局による多くの端末がつながる)」とか、「信頼性が高くなる」とか......う〜ん......で? となりがち。スマホ以外の用途といっても、この数年に"未来はこうなる"と見せられ、聞かされてきた、いわゆる"割とよくある話"から、あまり前に進んでいません。 "5G社会"って何よ? もうひとつ、書き進めていて"うっ!"となってしまうのは、それホントに、実現できんの? という素朴な疑問が湧いてくること。いや、技術的に不可能というわけじゃないんですよ。でも、本当に事業としてそれやり切れるの? 的なものです。 最近よく使われるキーワードに"5G社会"という言葉があります。 5G社会というのは、5Gが普及した社会においては、移動体から様々なジャンルのIoTまで、社会を構成するあらゆるモノや設備、装置などがネットワークにつながり、社会的な変革にまでつながっていくことを端的に示したものです。 実は僕も講演などでよく使うので他人のことをとやかくは言えませんが、この単語は極めて概念的なため"まぁ、そんな感じ"を伝えるのには便利なキーワードなんです。実際、5Gで実現できることはたくさんあります。ありますけれど、"技術的にできること"と"経済合理性を伴った実現可能なアイディア"は違います。 僕は5G否定派ではありません。ですが、どう実現していくか?というシナリオを現時点で考えても、あまり見えてこないことも確かです。 たとえば多種多様なIoTデバイス、あるいは道路を走る自動運転車。これらの接続のため、前者なら低速度でも大容量の基地局を面で配置、後者ならば低遅延・大容量の基地局を道路に展開していく必要がありますよね。 ではそのコストは、すべて携帯電話の事業者が展開するのでしょうか?特定の用途が決まっている場合、悩ましい展開が想定されます。5Gは1基地局あたりのエリアが狭く高速、大容量であるため、エリアを作るための投資負担は大きなものになります。米国では大手通信会社が5G投資の資金を捻出するために、従業員を1万人削減すると発表しました。 用途が絞り込まれているならば、関連する産業の企業と合同のプロジェクトになるかもしれませんが、投資の枠組みがどうなっていくのかは、まだそこまでは見えていません。 また、実証実験に関しても"やれること"、"やりたいこと"のアイデアが枯渇気味で、総務省も"個人からの応募大歓迎"と実証実験に向けた着想を募集しましたが、比較的無難かつ想像しやすい案が多いように見受けられました。 ......っと、いきなり難しい話になってきましたが、そんなことをウダウダ考えても仕方なかろうということで、5Gにまつわる時事ネタを拾いつつ漫談的取り上げていき、たまに総論的に関連するコラムを感想文として書いていこうというのが、この連載の趣旨です。 そもそも"思い通りに進まない"のが新世代移行時のシナリオ 通常ならば、5Gの特徴を紹介した上で、今後こんな可能性があるよ!と書くのが筋でしょうが、そうした記事はすでにたくさんありますから、Engadget 日本版の読者は見たことがある人たちばかりでしょう。 それに、特徴を理解して、事例として考えられる用途を挙げてみても、実のところ本当に消費者の心に刺さる用途というのは、技術的な進歩を主導する側が作り出すわけではなく、ひとつのヒット商品から爆発的に拡がって定着することが多いものです。 たとえば携帯電話のカメラ機能は、2000年に発売されたJ-Phoneの「J-SH04」がきっかけでした。メールで写真を送れる機能をシャープが搭載してみたところ、これが「写メール」として大ヒット。KDDIがすぐに追従し、ついに市場リーダーのNTTドコモもこれを模倣しました。 メールで写真を送る。 今では当たり前となっていることですが、まだ2G主流の時代にグローバルにカメラ付き携帯電話を普及させたのは、当時、弱小だったシャープの携帯電話だったのです。そんなことをPDC(NTTドコモが開発した2Gネットワーク)とi-modeを開発したNTTドコモが想像していたとは思えません。事実、ドコモが端末にカメラを搭載したのは一番最後だったんですから。 3Gの時も似たようなものです。 最初の3G携帯電話がNTTドコモから登場した際、キラーアプリケーション(普及を促す誰もが欲しがる機能)としてプロモートされていたのは、今は懐かしい言葉ですが「テレビ電話」でした。 ハンディ端末でテレビ電話......というのは、オッサン世代にとっては実に未来的でワクワクするテーマなのですが、一般受けするかと聞かれると疑問です。なにしろ当時の"テレビ電話"は通話料も高かったですからね(Facetimeのようなインターネット通信を用いたものではなく、通話サービスの一種でした)。 結局、3Gを普及されたのは、僕に言わせればKDDIの"着うたフル"が大きなきっかけだったと思います。 "着うた"も、今となっては懐かしのキーワードですが、着信音を楽曲にできるというサービスです。3Gへの移行時にデータ定額制が導入され、楽曲すべてを聞ける"着うたフル"は、日本限定の流行とはいえ、最盛期には年間1200億円レベルにまで成長しています。当然、対応機でなければ愉しめないため、買い換えが進んで3G端末が急増したのです。その頃の日本では、音楽のダウンロード販売もあまり普及していなかったため、"ダウンロードで音楽を買う=着うたフルでダウンロードする"的な(グローバルではあまり見られない)状況がありました。 当時、すでに音楽のダウンロード販売自体は行われていましたが、まさか携帯電話の着メロ後継である着うたを"フル"にすることが普及のトリガーになるなんて、ちょっと想像できませんでしたよ。いや、本当に。 で、4Gの時はどうだったかというと......っと、このあたりになると皆さんご存知ですよね。 ひとつ言えるのは、これまでをふり返ると、消費者視点で新しい世代の移動体通信システムを使いたい! と思うようになる理由は"端末の機能が具体的に大きく変化"するからだと言えるのではないでしょうか。 もっと言うと、現在のスマートフォンが持つ機能に"満たされている"ならば、5Gで何かが変わると聞いてもあまり興味を持てないというのが本音でしょう。まだエリア整備の進捗どころかサービスさえ始まっていないんですからね。 やっぱり"5Gに否定的じゃないか"と思うかもしれませんが、そうではありません。 日本では今年秋から始まる予定の5Gサービスですが、海外では昨年10月に米国でサービスが開始されています。実際にサービスが始まれば、その特徴を活かして商売の種にしようという人はたくさん出てくるものですし、ユーザーも"なるほどこういうものか"と体験を重ねる中で、"あぁここが刺さるのか!"と用途を見つけ出すものです。 "思い通りには進まない"のが当たり前なんですよね。 "放送を置き換えよう"もひとつの戦略 "思い通りに進まない"ことを知っているのは僕たちだけではありません。 これまで無線通信のインフラを作ってきた事業者は、世代ごとにネットワークの作り直しを繰り返してきて、消費者の心に刺さるアプリケーションを確信的に作ることが難しいとがわかっています。過去に何度も繰り返してきていますからね。 しかし、ひとつ言えるのは、どういう経路を辿るにしろ、いずれ(時間はかかったとしても)5Gが使われるようになるということです。本当に5Gの時代が来ると、どうなるんでしょうか? 世の中全体が、無線なのに光回線で結ばれているかのような高速で低遅延の通信で結ばれます。 5Gをスペックだけで評価すると、160MHzの帯域幅を与えた場合に4×4のMIMOアンテナで理論上は最大毎秒10Gbitの速度が出ることになっています。しかし、この数字はまだ呪文のようなものです。事実、米国で始まっている5Gサービスも、現時点で最大940Mbpsというスペックであるうえ、実効速度も300Mbps程度となっています。 300Mbpsの実効レートが出るとなれば、そもそも自宅にネットを引く必要があるのか? という話にもなってきますよね。実際、米国での現在の販売のされ方も、自宅のケーブルテレビ契約を、5G契約に変えませんか? というものです。 着うたフルの例にもあるように、より手軽でリッチなコンテンツへの動線が引けるのであれば、移動通信システム経由で消費してもらった方が導入も手軽で、将来的にもアップグレードしやすく、事業面でも(将来の)ユーザーの選択しとしても柔軟性が高く効率がいいのでは? なんて思いませんか。 無線だからの"手軽さ"というのは実に効果的な武器なのです。 ところで"ベライゾン"って知ってます? というわけで、「5Gによってもたらされた」というと語弊があるかもしれませんが、過去数年に渡って起きてきたネット事業者の再編が、5G時代に向けて加速していると言えるでしょう。 これまで光ファイバーが家庭にまで引かれるといっても、それはケーブルテレビの置きかえに近いものでした。しかし携帯電話網までが光ファイバー回線並みになるとしたら、これまで"放送"が担ってきた役割も変化するかもしれないと考えるのが妥当でしょう。 4GのLTEが主流の現在でさえ、動画は当たり前になっています。その延長線上にあるメディア事業に対してドカーンと投資をする企業が生まれました。そのうちの一社がベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)です。 ベライゾン(Verizon)は米国でも最大級の通信事業者で、携帯電話事業者のベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)を中心事業としていますが、有線インターネット回線/音声回線の事業者としても最大手です。クラウド型のサービスをホスティングするために、クラウドサービス向けデータセンターの買収も行っていますが、実はEngadgetを運営していたAOL(元アメリカオンライン)も保有していました。 そして2017年、Yahoo!(JAPANではなく米国のYahoo!)を買収し、AOLと統合してOathという会社になっていました(ということで、Engadget 日本版もOrth JAPANなのですが、実はさらに再編が進んでベライゾン・メディア・グループという部門名に。うーん、実にややこしい)。 いずれにせよ、Engadgetは主に携帯電話事業を行っている巨大通信事業者のコンテンツ部門のさらに一部、ということになるわけですが、ここで興味深いのは、なんでベライゾンはYahoo!やAOLを保有しようと思ったのか? という部分です。 ご存知のとおり、それまでなら電波やケーブルでの放送で楽しまれていたメディアが、ネット経由で楽しまれるようになってきました。日本の場合は、実のところまだまだネット経由で楽しむ時間は短いのですが、米国ではヤバイぐらいにネットへのシフトが進んでいます。 それが5Gでさらに加速すると仮定するならば......。 ベライゾンは携帯電話市場が成熟したあとのことを考えて、数年前から個人向けメディア、つまりネットへのシフトに"賭けて"きました。5Gへの投資を携帯電話事業者として行いながら、メディアシフトに対応するために多種多様のコンテンツに投資をしていたわけです。"契約回線数増加"や"顧客単価上昇"といった増収の見通しが立てられなくなった後の生き残り戦略として、5Gがメディア投資をさらに加速させるということですね。 ということで、初回は"ニュースウォッチ"ではなく、ひとつの事例としてEngadgetの親会社「ベライゾン・コミュニケーションズ」について書いてみましたが、おそらく来週はMWCからのニュースがたくさん入っているに違いありません。

続きを読む
*外部サイト(オリジナル記事)に移動いたします。

IoTニュースの一覧ページは、こちらをご覧ください。

あわせてお読みください

記事ランキング

  • 直近1時間
  • 昨日

話題のキーワード

注目連載

IoTニュース

Gmailが「IFTTT」「Gmail Backup」など外部サービスのサポートを終了、その理由は【やじうまWatch】
激安入手可な据置型LTEルーター+格安SIMで月1000円以下の固定回線(?)を実現する
IoTセキュリティに向けた“シフトレフト”が一筋縄ではいかない理由
IoTデバイスの少量生産を可能に、25万円から金型が作れる企業があった
ソフトバンク銀座・表参道に「おうち型」IoT体験コーナー設置
ドコモ、IoTデバイス保護ソリューション「ドコモ・クラウド基盤ネットワークセキュリティサービス」を提供開始
NVIDIAとAWSが提携、エッジデバイスでのAI活用を後押し
【マンガ】Notesで「AI」「チャットボット」なんて無理だと思っていたのに……
ベッドに入れるだけで睡眠計測、「au HOME」のホームIoT新製品で睡眠の質が変わるかも【今日も元気に仕事しよう!】
国内IoT市場のユーザー支出額、2023年まで年平均13.3%で成長--IDC調査
オートバックス、大分県と包括連携協定を締結 IoTで安心・安全を提供
NVIDIA、JetsonとAWSとの連携を発表 エッジAIが容易に
日立、利用実績のあるLumadaソリューションをコンテナ化した「Lumada Solution Hub」を発表 | IT Leaders
街路灯をSigfoxでIoT化、オプテックスが杉並区で実証実験
Gunosy、データ利活用を促進する専門組織「Gunosy Tech Lab」を新設 
離農時代を救う「アグリテック」注目はIoTとAIーースタートアップが語る注目テクノロジー/笑農和代表取締役 下村豪徳氏

IoTニュース”は、Mynd Engineを活用して、世の中のIoT関連の記事をまとめさせていただき、ご紹介させていただきます。