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コミュニケーション
2016.08.29

人間とロボットが共存する社会とは 話題作『プラネタリアン』の青井宏之プロデューサーに聞く

2016年9月3日に劇場公開する『planetarian 〜星の人〜』(以下、プラネタリアン)は、今から12年前、2004年に公開されたゲームが原作。デパートの中にあるプラネタリウムで解説員として働く人型ロボットの「ほしのゆめみ」と偶然ゆめみに出会う青年「屑屋」の交流を描いている作品だ。

舞台は世界大戦後の雨の降り止まない世界で、ゆめみは細菌兵器の影響で封鎖された街にひとり残されていた。街が閉鎖されたことも知らず、30年もの間プラネタリウムで来場者を待つ壊れかけのロボット。

そこに現れた屑屋に、プログラム通り無邪気に接客していくゆめみの健気さが心を打つこの作品は、12年経った今でもゲームはもちろん書籍や配信版のアニメなど幅広く展開され根強い人気を持っている。

12年前の作品をなぜ今映画化したのか、プロデューサーの青井宏之さんに話しを伺った。

まずはゆめみについてもう少し詳しく紹介しよう。デパートの中にあるプラネタリウムで働くロボットのゆめみは、組み込まれているプログラムのほか、つながっているネットワークを駆使し様々な業務をこなす。

デパートの1階の花屋に花束を依頼したり、天気を感知し臨機応変に案内を変更したり、来客を安全に帰宅させるために街の様子をリサーチしたりするほか、自分には解決できないシチュエーションに陥るとサポートセンターにアクセスし指示を仰いだりと、その姿は私たちが思い描くロボットそのものだ。

そんな平和な時代は過ぎ、舞台になっているのは廃墟と化してしまったデパート。彼女は30年前に「また戻ってくるから」と言い残して去って行った館長や職員の言葉を信じ待ち続けていた。電力の供給もなくなった街でゆめみが動けるのは1年でたった7日間。その大切な7日間も彼女は30年前と同じように過ごしてきた。

テクノロジーの進化は早く、原作が発表されたころよりも私たちは多くの未来を手にしている。ゆめみはいないものの、彼女が行ってきたサービス自体は実現可能なものも多い。そんな中、この時代に作品をアニメ化したのはなぜなのだろう。

技術の進歩で変わるモノと、いつの時代も変わらない普遍的なモノ

原作の発表から12年の年月を経て劇場版が公開されるプラネタリアンには今だからこそ描けた世界観があると青井さんは話す。

「当時に比べ、アニメーションのCG技術は大きく進歩しました。今回はプラネタリウムが舞台の作品なので、星空のシーンも出てきますが、そこはCGを使って描いています。昔はこれを点々と本当に手で描いていくことが主流でした。CGを使うことで、奥行きを出せました」

ストーリーに訴えかけるだけでなく、高い技術で世界観を表現できたというわけだ。もともと日本人は3Dアニメよりも、べったりとした2Dアニメに親しみを持つので、2Dと3Dの中間になるような作品作りを目指すことが多いという。それだけに海外の作品と比べて苦労する点も多いということだが、その結果もあり、アニメそのものに説得力を出せるようになったという。

その一方、変わらないものもあると青井さんは話す。

「これはSF作品ですが、SFにおいてアンドロイド(ロボット)との交流はいつの時代も変わらない普遍的なテーマだと思います。テクノロジーが進化して、ロボットが身近になってきても、まだまだ憧れの世界ですよね」

冒頭で紹介したゆめみのように、人間の感情を読み取りすべてを自発的に行うロボットというのはやはりまだ憧れの世界だ。

「ロボットへの憧れやその交流との期待は今も変わらず、その結果プラネタリアンは作品として古びず、ぶれることなく存在してきたと思います。時代は変化しても変わることのない作品の魅力を描きたかったんです」

いつの時代もわくわくするロボットとの物語。多くあるロボット作品の中でも、今作は特に「ロボットとは何か」というものにこだわっているように感じる。

ロボットであることに徹底した作品作り

「私は涙を流せません
ロボットですから……」

この作品の印象的なキャッチコピーだ。かわいらしい女の子の形をし、柔らかく喋るゆめみだが、彼女はやはりロボット。目で認識したものを解析し、プログラムに沿って会話や動作をしている。そこには、現在のモーションセンサーや、AIなどの研究を彷彿とさせるものがある。

「屑屋と会話をするときも、彼女はプログラム通り動いているだけなので彼を怒らせてしまう。その表情を読み取れても、ゆめみ自体に感情はありません」

青井さんは、融通の利かないゆめみの言動が人間に訴えかけるものがあると話す。

「プログラムに組み込まれたゆめみの動きは、人間からすると忠犬ハチ公のようにピュアなんです。30年間、プラネタリウムの館長たちが帰ってこないのにも関わらず待ち続ける。融通は利かないかもしれないけれど、すごく愚直で文句も言わない。

これは感情を持つ人間にはできないことですよね。人間は変わっていくけれど、プログラムが変わらない限り、ロボットは変わりません。そこに、変わらないからこその良さを見つけることができるんじゃないでしょうか」

ロボットには感情がないが、素直に動くその姿に人間が心を見出してしまうのだろう。そして、その健気さがいつの時代も人の心を打つ。感情を持つロボットが登場する作品も多いなか、プラネタリアンは「ロボットはロボットだ」としっかりと線を引いているのだ。

では、そんな彼女と交流をした屑屋の動きは何を表しているのだろうか。

ロボットと共に生きる社会とは

そもそも屑屋とは、人の名前ではない。空を見上げても星も見えない荒れ果てた世界で、貴重物資を回収し売り払うことで生計を立てている人の呼び名である。信じる人も頼れる相手もいない屑屋が、廃墟と化したデパートの中でゆめみと出会った時にどういう心の変化が起こったのだろうか。

「何にも縋るものもなく、たったひとりで生きてきた屑屋にとって、愚直な彼女の姿は強烈ですよね。そこには彼女の感情があるわけではないのに、交流によってゆめみのことを「こいつ」から「彼女」と呼ぶようになっていくのが象徴的だと思います。

得体の知れないロボットから、人のような対象になっている。プログラムに関わらず、ロボットの言動が心を溶かしていくのがわかると思います」

また、青井さんはロボットだからこそ屑屋の荒んだ心を変えていったとも話す。

「ロボットは命令に従って動いているだけだけど、人を裏切らないですよね。これはロボットだからこそだと言えると思います。僕らの思い描く未来の延長線上にあるロボットも同じで、だからこそロボットと共存する未来に憧れるのかもしれません」

SF作品の中でいつの時代も「いつか叶えたいもの」として未来の延長線上にあるロボット。生活を便利にするために登場してきているサービスやロボットはゆめみのような姿ではないが、やはり人はいつか……と思ってしまうのかもしれない。

実はプラネタリアンのアニメは配信版と劇場版で大きく異なっている。配信版では、ゆめみと屑屋との出会いが描かれ、屑屋がどのようにロボットに心を溶かされていったかに焦点が当たっているが、劇場版はその後の屑屋についてもしっかりと描かれている。

ゆめみには感情はなかったが、交流することで変わった屑屋の心と未来を見ることができる。この作品は、人とロボットが共に生きる社会への憧れと一つの答えでもあると言えるだろう。

『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』

配信:ニコニコ動画、Hulu、U-NEXT、Netflix、J:COMオンデマンドほか多数

あらすじ:
封印都市の忘れ去られた【プラネタリウム】。
そこに迷い込んだ男が出会った【ロボットの少女】、星に導かれた【奇跡の物語】

世界大戦後の世界。人々から見捨てられた街【封印都市】のデパートのプラネタリウムに、ロボットの少女がいた。彼女の名前は“ほしのゆめみ”。彼女はプラネタリウムの解説員で、1年間にたった7日間しか稼働することができない壊れかけのロボットだった。そこで彼女は、30年間いつか誰かが訪れることを信じで、1人誰もいないこの世界で待ち続けた。そして、30年目の目覚めたその日に、彼女の前に一人の男が現れた。彼は都市を徘徊する戦闘機械【メンシェン・イェガー】の襲撃にあい、このプラネタリウムに迷い込んだのだった。

「プラネタリウムはいかがでしょう。 どんな時も決して消えることのない、美しい無窮のきらめき……。 満天の星々がみなさまをお待ちしています」
大戦の影響で、星すら見えなくなった、滅びゆくこの世界で、起こった奇跡とは……

 

『planetarian 〜星の人〜』

9月3日全国ロードショー
あらすじ:
語り継がれる【星の系譜】は、感動の終幕(フィナーレ)へ

人間の愚かな戦争は、世界を雪で覆い、確実に滅びへと向かわせていた。隆盛を誇った文明も加速度的に荒廃していき、人口も 10 万人を切ろうとしていた。星すら見えないこの世界では、人々は地上で暮らすことも難しく、地下の集落に身を寄せ合って暮らしていた。かつて「屑屋」と名乗っていた男は、過去のある出来事がきっかけで「星屋」と名乗るようになり、“星の美しさ”を彼が訪れる集落の人々に伝えていた。その知識の深さとたたずまいから、いつしか、人は彼のことを“星の人”と呼び、敬うようになった。そして、世界を旅しながら、老いていく星の人には、ただ一つの心残りがあった......。星の人は、旅の途中行き倒れた集落で、レビ、ヨブ、ルツの三人の少年少女と出会う。星に興味を持つ彼らの姿を見ていると、かつて自身が若かりし頃に出会ったロボットの少女の面影が思い出されていく。彼女と出会った場所、そこは封印都市と呼ばれるところだった―

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