オリンピック・パラリンピックで活用されるコンテンツ技術とは

スポーツとコンテンツ技術の関係とは
2016年10月27日~30日の期間、東京・青海にある日本科学未来館にて、「デジタルコンテンツEXPO 2016」が開催されている。その初日には「オリンピック・パラリンピックにおけるコンテンツ技術の可能性~東京2020公認プログラム(経済・テクノロジー)~」と題した講演とパネルディスカッションが行われた。
まず登壇したのは、東京大学先端科学技術研究センター教授の稲見昌彦氏。「体験型スポーツ観戦」をテーマに語られた。
稲見氏は、技術を開発することで、人間の身体能力をどう高めていくことができるか、感覚・知覚能力をどう高めていくかについて研究をしている。日本科学未来館に「Living Lab Tokyo」という拠点を構えており、そこでも研究をしているとのこと。
ここではJINSとの共同研究として「JINS MEME」の開発を行っているのだが、この眼鏡には鼻のところに電極が付けられており、眼電位を測定できるようになっている。「スポーツをプレイしている間にどのような目の動き方をしているかが分かる。熟練したサッカー選手は視野が広いといわれているが、どのようなメカニズムにより起きているのか探索することに使えるかもしれない」と稲見氏。


これらの技術を踏まえて、2020年へのチャレンジとしては、オリンピック・パラリンピックを盛り上げていくために、先端科学技術研究センターを使って支援していくほか、テクノロジーと文化が結びついたイベントがあってもよいとの考えのもと、稲見氏は「超人スポーツ協会」を立ち上げたのだという。
ここでは、積極的に技術を使うことで、技術とともに進化し続け、すべての人が競技者として楽しめ、すべての人が観戦者としても楽しめるスポーツを目指している。国の科学研究費を使って、超人スポーツのための身体能力拡張技術の研究もしているとのこと。

では2020年にはスポーツとコンテンツ技術の関係はどのようになっているのだろうか。稲見氏はナイキの「RISE」という仕組みを例に挙げた。日本のバスケットボールでも開幕戦に使われたそうだが、これは床にLEDのディスプレイを敷き、選手の動きに合わせてさまざまな変化を見せるというものだ。
「プロジェクションマッピングもいろいろと使われているが、将来のナイターではプロジェクションマッピングによって照らすということもあるかもしれない」(稲見氏)。
また、慶応大学の研究で「触覚放送」というものがある。これはラケットでボールを打ったときの衝撃の触覚を感じられるという仕組み。芯に当たったときと、はじに当たったときには衝撃も音も違うが、それを記録して再現する。このため、選手がプレイしたような感覚を家庭でも楽しむことができるというものだ。
ちなみにスローモーションでも衝撃を感じられるようになっている。「このようなコンテンツ技術はトレーニングに生かすことができるかもしれない」と稲見氏。このほかにも、ドローンを飛ばしておき、それを背中から追いかけるように設定すれば、ランニングフォームのチェックなどにも使えるかもしれない。こうした研究も行われているそうだ。
アメリカでの研究となるが、バスケットボールのビッグデータ解析を行った例を稲見氏は紹介。これはどの場所で、どの角度で、どの位置にボールを投げたときに一番シュートしやすかったか、というもの。この研究では、45度という角度が大事だということ、18インチのゴールの中心位置から奥に1~2インチ行ったところに入れるのがパーフェクトだと言うことが分かったそうだ。この結果に基づいたトレーニング装置も開発されている。

