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テクノロジー
2016.10.24

大辻雄介の「教育のIoT思議」 第2回:つながる教室

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ウェブ会議システムの限界

私は隠岐島前地域で「教育のICT活用」を推進しながら、島根県庁が主管である「島根県情報戦略化会議」の委員を務めています。

隠岐島前から県庁がある松江までは日本海を渡るためフェリーまたは高速艇の移動になり、14時開始の会議に間に合うためには、午前8時の高速艇に乗らなくてはなりません。同じ島根県内であるにもかかわらず6時間の移動時間を要するのです。

東京を起点にしたとき、6時間あったら一体どこまで移動できるのでしょうか。調べてみると陸路でも函館や博多まで辿り着くことが可能です。隠岐島前が移動に際して、いかに困難な地域であるか想像して頂けるかと思います。

そのような環境なので、隠岐では仕事で頻繁にウェブ会議システムを利用します。以前はSkypeを使っていたのですが、最近はもっぱら”appear.in”です。「アカウント不要で誰でも使えること」と、URLの共有だけでログインできるため、先方が「ダイヤルコールに応える必要がないこと」が大きな利点です。同時に8人まで入室可能で、デスクトップ画面共有も可能なためパワーポイントのスライドショーも便利です。

appear.inの入室サイト。「/」以降を自由に設定できる。

ところで上述の情報化会議など、ICTを司る会議において「ICTが主題の会議なのにウェブ会議じゃないの?」という揶揄が、まれに世間でささやかれます。確かに「情報化を推進する会議であるなら、わざわざ6時間かけて移動するのではなくウェブ会議でもいいじゃないか」と思われるかもしれません。

しかし、その指摘は誤りです。会って話すことと、パソコンの画面ごしにインターネットを介して話すことは議論の深まり方に大きく差ができますし、多くの話者は聞き手の様子の機微を感じ取って話すペースを調節したり、ときに内容の反復などをして理解を深めようとするのです。

容易に「ネットごしで話せるのだから、会わなくてもよい」と考えないほうがよいでしょう。

教室のIoT

「対面の会議」と「ウェブ会議」でコミュニケーションに差異が生じるのと同様に、「対面の授業」と「遠隔授業」では講師の振る舞い方も変わってきます。きちんと相手に伝えるためには、遠隔授業のほうがより難しいことは想像に難くないでしょう。使用するシステムによって差はありますが、私は概ね以下のようなことに気をつけています。

 

・なるべくカメラ目線
・生徒への指示は明確かつ複数回述べる
・テンポよい語り口調

…と、書いてみて気がついたのですが、対面の授業でも同様のことに気を使わなければなりませんね。言い換えると、これらのスキルが強化される遠隔授業を何度もやれば対面の授業もスキルアップしていく、ということになります。読者の方もウェブ会議のときには相手に伝わるように、普段よりロジカルに説明することを心がけた経験があるのではないでしょうか。その点、仕事でも授業でも同じですね。

遠隔授業をやって10年になる私ですが、はじめて遠隔であることを忘れさせてくれるシステムに出会いました。それは今年6月に隠岐海士町にある島前研修交流センター「三燈」に設置された”SmoothSpace (スムーススペース)”というシステムです。

SmoothSpaceを使った遠隔授業

写真のように大きなスクリーン(幅約4m、高さ約2m)に接続先が映し出され2枚をL字に並べているため、あたかも「同じ空間」にいるかのように感じられるのです。人物もほぼ等身大に映し出されるため、10歩あるけば向こう側に行けるような「つながり」を感じられます。

SmoothSpaceを使った授業

月に1回必ずこのシステムを使って、隠岐島前高校と宮崎県立飯野高校の生徒たちが交流する機会をつくっています。宮崎県側にも同様のシステムが設備されています。10月17日(月)にもSmoothSpaceを使った遠隔授業が行なわれました。

この日の内容は、それぞれの学校で取り組んでいる「地域課題解決プロジェクト」の発表で、宮崎県、島根県という距離をこえて意見交換、質疑応答を行い相互に参考にしながら今後の取り組みに反映させていきます。

宮崎県知事も授業に参加していただき、高校生からは「県政と町政の違いは?」「宮崎市内ではなく中山間部の人口増加の施策は?」など、なかなか鋭い質問が飛びました。県知事は丁寧に高校生たちの質問に答えてくださり、宮崎県立飯野高校の生徒だけでなく島根県立隠岐島前高校の生徒たちにとっても勉強になり、良い機会になっていました。

授業に参加した隠岐島前高校2年生の真野拓哉くん(17)は「相互に情報交換をするなかで、(相手高校の生徒に対して)とても親近感が湧いた。飯野高校の生徒たちは、地元をより良くしようという意気込みが高く刺激を受けた」と話していました。

「親近感」や「熱意が伝わってくる」ということからも、SmoothSpaceが他のウェブ会議システムと比べて「つながり感」が強いことがわかります。実際にスクリーンの前に立ってみると没入感が強く、VRにも近い感覚を覚えました。

普段われわれは、対面の会議とウェブ会議ではその行動を意識的に変えています。そういった配慮をしなくても対面と同じように授業を受けられる、授業を実施できる、そんなIoT環境が「教育のICT活用」にドライブをかけるのかもしれません。

【お知らせ】SmoothSpaceをつかった遠隔授業は11月11日にもございます。
見学希望のかたは以下のリンク先からお申込みください。
http://www.oki-learningcenter.jp/news/20161019-1073/

 

<プロフィール>

大辻雄介

大手進学塾・予備校に勤務したのち、ベネッセコーポレーションでICTを活用した教育の事業開発を担当。日本初の無料インターネット生放送授業を行い、当時最大15,000人が同時に受講した。その後、隠岐にある海士町へ移住し、隠岐國学習センターの副長として日々生徒の指導を行う傍ら、島のICT活用を推進している。海士町から離島中山間に遠隔授業を配信しており、リクルート「スタディサプリ」数学講師、ベネッセ「受験算数ウェブ授業」算数講師もつとめる。2016年度、島根県情報化戦略会議委員。

テレビ東京系列「クロスロード」2016年10月8日(土) 出演

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